こぶお逝く

こぶおが死んだ。
ここ2週間ぐらい、日に日に苦しそうになっていた。口を開けっ放しで呼吸も荒く、餌も食べなくなっていた。永くは無いな…と思っていた。私が宿直の日に逝ってしまうのは嫌だな、と思っていたのだが、飼い主思いのこぶおは今日逝ってくれた。
考えてみれば、「こぶお」と名前をつけた時点でかわいそうなことをした。「こぶ」が命を奪うような病気だったのだから。癌にかかった人のあだ名を「がんお」とつけるようなものだ。以前パロットファイヤーシクリッドを飼っていたときにもこぶが出来たことがあったが、それはそれほど大きくならず問題にもならなかった(死んでしまったのは飼い主の不注意のせいであった)ので、今回もそうだと思っていた。しかしこのこぶはまさに死病であった。
亡骸を埋葬しようと水槽からすくい出し、少し観察してみると、こぶはあごのしたから右エラの後ろのほうまで広がっていた。エラ蓋をめくってみるとこぶのようなものはエラの半分以上を覆っていた。これで呼吸が出来なくなって死んでしまったのだろう。
それにしても今回不思議だったのは、これだけ弱ったこぶおを他のどの魚たちも虐めなかったことである。天寿を全うするより前に他の魚たちに虐め殺されるのでは、と思ってもいて、天寿を全うさせるには隔離するしかないかな、と思っていたのだが…死んで水底に横たわっているこぶおを他の魚が見守っているようにも見える、と家内は言った。そんなわけ無い、と思いながらも、しみじみした光景であった。